赤い糸

英国の雑誌”MONOCLE”で岡野暢夫が紹介されました(2021/03/10)

Book repair Nobuo Okano, Tokyo

“MONOCLE” MARCH 2021 , ISSUE 141

Magazine | Monocle

河野裕子歌集「あなた」(岩波書店/2016年刊)を個人からの依頼で特装本に仕立てました。気に入った本を製本家に依頼して愛蔵本にするヨーロッパ伝統の文化は日本ではあまり馴染みがありません。一点制作の特装本を蔵書の一部とする愛書家(蔵書家)は日本ではあまりいないようです。

出版本の「あなた」は、白地の表紙に赤のタイトルとイラスト、見返し紙が赤、それにしおり紐や花ぎれも赤でした。赤を基調としたブックデザインです。(装幀・本文デザイン 濱崎実幸)

特装本は、本を解体して丈夫な麻糸で手かがりし依頼者の希望する仕様で制作します。この本は、赤の山羊革の総革装、見返し紙は製本工房リーブル製のマーブル紙という注文でした。

まず、機械綴じの糸を切って折丁ごとに外します。第1折丁の綴じ糸を切ろうとして驚きました。綴じ糸が赤だったのです。綴じ糸は白が普通で色糸が使われることはほとんどありません。明らかにデザインのひとつとして綴じ糸を赤にしたと思われます。思わぬ発見でした。

本を読んでいて頁の奥にある綴じ糸に気を止めることはほとんどないかと思います。見えないところにするお洒落と同じですが、この糸(意図)にどれだけの読者が気付いたでしょうか?

(2018.5.31)


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